ディケンズ・フェロウシップ日本支部

BLEAK HOUSE

『荒涼館』

主な登場人物作品の梗概
 




主な登場人物



作品の梗概

この小説の全分量の約半分(三十四章)は全知の語り手によって現在形で語られ、あとの半分(三十三章)はエスター・サマーソンによって過去形で語られている。物語は、大法院におけるジャーンディス対ジャーンディス事件の裁判をもって始まる。デドロック家の顧問弁護士タルキングホーンが、レスター卿とデドロック夫人をロンドンの邸に訪ね、裁判の進行について語り、一枚の宣誓口供書を取り出す。これを見て夫人は失神しそうになる。その筆跡を、自分のかつての愛人のものだと知ったからであった。エスター・サマーソンが自分の身の上話を始める。不幸な少女時代を送った後、彼女は保護者のジョン・ジャーンディスに呼ばれてロンドンに出る。ロンドンでジャーンディスの被後見人のエイダ・クレアーおよび、エイダのいとこのリチャード・カーストーンに会う。エイダとカーストーンは愛し合っている。三人はジャーンディス家に住むことになる。大法院の裁判はいつになっても結着がつかず、ジャーンディスはこれに期待しなくなっているが、楽観的なリチャードは、裁判によって自分に財産がころげ込むものと信じている。エスターは、エイダおよびリチャードと共にフライト嬢(Flite)に会う。彼女もこの裁判の犠牲者で気が変になっている。また、三人はその夜ジェリビー夫人の家に泊り、彼女が家庭を顧みずに博愛事業に没頭している様を見る。フライト嬢が自分の下宿の主人クルックに三人を引き合わせる。

エスターはやがて荒涼館の有能な家政婦になり、エイダとリチャードに信頼され、ジャーンディスにも何かと相談を受けるようになる。彼女は、金銭問題では子供に過ぎないと称するスキンポールに会う。彼が借金のために逮捕されると、人のいいリチャードがそれを払ってやる。

デドロック夫人とエスターとのつながりが明かされる。法律書記ガピー(Guppy)はエスターに心を奪われるようになるが、デドロック家のチェズニー・ウォールドの邸を訪れ、デドロック夫人の肖像を見て、だれかに似た顔だと思う。しかし、だれの顔かはっきりしない。彼はエスターに求婚し、断わられる。

デドロック夫人が強い衝撃を受けた宣誓口供書について、タルキングホーンが調査を始める。それが、ニーモーと称する、クルックの下宿人であることを知り、訪ねて行ってみると彼は死んでいる。彼の書いた書類は全然見つからない。浮浪児のジョーは、生前のニーモーに親切にされていたので、その検屍のとき証言させられる。タルキングホーンがデドロック夫妻に事件を報告するが、夫人は無関心を装う。

リチャードは、医者、法律家、軍人などの職を次々に志すが、一方、裁判が終結すれば金持ちになり、エイダと結婚できるものと信じている。エスターは、フライト嬢を通して知り合った若い医師ウッドコートを愛するようになる。ジョーは、ヴェイルをかぶった婦人が彼に金をくれて、ニーモーの墓に案内させたことをタルキングホーンに告げる。タルキングホーンの部屋で、同じような服装をした女性を示され、ジョーは、その服は確かに見覚えがあるが、その女性は知らないと言う。実は、この女性はデドロック夫人の侍女ホーテンスで、彼女は、夫人が別の女中ローザ(Rosa)をかわいがるので夫人を恨んでいるのであった。タルキングホーンは彼女や、デドロック邸の家政婦のむすこジョージ・ラウンスウェル(George Rouncewell)などを利用してニーモーに関する秘密をさぐり、それによってデドロック夫人を恐喝しようと考えている。

ガピーがデドロック夫人を訪ね、エスターが夫人の娘であること、エスターの本当の姓はホードンであり、ニーモーとはホードン大尉の仮名であることがわかったと告げる。

エスターと彼女の女中チャーリーは煉瓦工の妻ジェニー(Jenny)を訪ね、そこでジョーが熱病で苦しんでいるのを見る。二人はジョーを荒涼館に連れて来るが、彼はその夜逃走する。チャーリーは彼の天然痘に感染し、その看護をしたエスターも同じ病気にかかる。エスターの病気は治るが、顔があばたで醜くなったため、ウッドコートのことは諦める決心をする。彼女は初めてデドロック夫人に会い、夫人はやさしく彼女をいたわった後、自分たちの関係が知られるといけないから二度と会うまいと言う。ガピーはエスターの容貌が変わったのを見て、彼女に対する気持が冷める。

ホードンの書類を手に入れようとして、ガピーとその友だちがクルックの家に行くと、クルックは自然発火で死んでいる。タルキングホーンは、ホードンの筆跡の見本をジョージ・ラウンスウェルから譲り受ける。彼はデドロック夫人に、彼女がチェズニー・ウォールドを離れない限り、彼女の秘密を予告なしに暴露することはしないと約束する。タルキングホーンは、ホーテンスから、彼女が助力した代償に新しい勤め口をさがしてくれとせがまれている。彼は、デドロック夫人にもう一度会うが、その翌朝自分の部屋で何者かに射殺される。ジョージ・ラウンスウェルが犯人として逮捕されるが、バケット刑事が真犯人はホーテンスであったことを突き止めて彼女を逮捕する。

デドロック夫人が家出する。ガピーが、彼女の秘密が数人の者たちに知られたと話したからである。バケットがエスターと共に夫人をさがしに出かけ、夫人がジェニーと服装を交換したため見つけるのに手間どるが、ついにホードンの墓の入口に死んでいるのを発見する。

大法院の裁判は結着するが、問題になっていた財産は訴訟費用として全部なくなってしまったことがわかる。カーストーンは秘密にエイダと結婚していたが、この結果に失望して死ぬ。

エスターは一旦ジャーンディスの求婚を受け入れるが、結局は彼女を愛していたウッドコートと結婚する。

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