ディケンズ・フェロウシップ日本支部

DOMBEY AND SON

『ドンビー父子』

主な登場人物作品の概要
 

主な登場人物

作品の梗概

ドンビー氏はドンビー父子商会のワンマン経営者である。高慢で、堅苦しく、めったに感情を表わさない男だったが、ポールと名付けられた息子の誕生は彼を狂喜させる。彼は長い間ドンビー父子商会の後継者となる息子の誕生を待ち望んでいたのである。夫人が息子を産んですぐ亡くなった時でさえ、彼はそれほど悲しまない。彼の心はいの日か事業を引き継ぐであろう幼い息子にひたすら向かっていた。ドンビーにはフローレンスという娘がいたが、彼にとってほとんど価値のないものであった。彼女はドンビー父子商会において意義のある地位を占めることはないからである。

幼いポールは最初乳母の手に委ねられたが、信頼がおけないという理由で彼女は解雇される。その後、彼の世話はドンビーの姉チック夫人とその友人トックス嬢がみることになる。二人がいろいろ面倒をみるにもかかわらず、幼いポールの健康ははかばかしくない。彼はどこか覇気がなく子供の遊びなどには目もくれない。父親はフローレンスを付き添わせ、彼を空気のよい海辺の町ブライトンのぺプチン夫人の寄宿舎へやることにする。

ドンビーが娘フローレンスを嫌うにもかかわらず、幼いポールは姉を慕い、二人はいつも連れ立っている。ポールがフローレンスを慕えば慕うほど、父親は娘を忌避するようになる。彼女が自分とポールの間を割くように思えたからである。

ある週末、ドンビーがブライトンを訪れ、ホテルで子供たちと食事をしている所へ、ドンビー父子商会で働いている若いウォルター・ゲイがやって来る。彼は以前、道に迷ったフローレンスを老いた女泥棒から救ったことがあった。彼の叔父の店が破産の危機に瀕していたため、ドンビーに借金を申し込もうとやって来たのである。ドンビーは六歳のポールに決定を委ねる。ポールがフローレンスに判断を仰ぐと、貸してあげるように言うので、彼はそう父親に進言する。

ほどなくして、ポールはできるだけ早く教育を身につけるために、ブライトンのブリンバー博士が経営する寄宿学校に送られる。ポールはここでの学習について行けず、1年も経たないうちに彼の体は一段と衰えてしまう。思い余った父親が、彼をロンドンに戻した後も、彼の体調はすぐれず、一向に好転するきざしは見えない。数ヶ月後、ポールは亡くなり、父親もフローレンスもその死を嘆き悲しむが、その理由は別々である。

ドンビーは息子の死を将来計画の挫折ととる。彼の姉とその友人は気晴らしに温泉地レミントン行きを提案する。それには退役軍人バグストック少佐が同行するこになる。レミントン滞在中、二人はイーディス・グレンジャーという若い未亡人とその母親に偶然出会う。バグストック少佐は母親とは旧知の間柄であった。ドンビーはすぐにイーディスに求婚する。彼女がその美貌と家柄によって自分の家を飾る存在と考えたからである。経済的に恵まれた生活を願う老いた母親に説き伏せられて、イーディスは愛情のないまま最終的にドンビーの求婚を受け入れる。

フローレンスはブライトンで偶然再会した後もしばしばウォルター・ゲイと会っていた。弟の死後、彼女は彼を亡き弟の代わりの兄とみなしていた。しかし二人の関係は、ドンビーによってウォルターが西インド諸島へ飛ばされることで一時途絶える。数年間経ってもウォルターが乗った船の消息は一切ないので、人々は皆船が沈み、彼は溺死したものと考えるようになる。

一方、ドンビーたちの結婚は始めからうまくゆかなかった。イーディスは気位が高く、自分を支配しようとしたり、自分を商品扱いするドンビーの態度に屈服せず、あらゆる面で彼に抵抗する。ドンビーはもったいをつけて、イーディスと直接話し合うのを避け、支配人のジェイムズ・カーカーに、彼女の振る舞いに不満であることを伝えさせようとする。カーカーは、イーディスがドンビーの意志に従わなければ、犠牲になるのはフローレスだと忠告する。その後、イーディスは、それまで仲むつましかったフローレンスに表向き冷たい態度をとるが、ドンビーに対しては、相変わらず拒否の態度を崩さない。ドンビーは再びカーカーを通してイーディスにすべてのことに関して自分の意志に従うよう強要する。

その結果、イーディスは公然とドンビーに盾突くようになる。ついに、彼女はカーカーと駆け落ちの形でドンビーのもとを去り、彼に仕返しをする。二人が姿を消した後、フローレンスは父を慰めようとするが、彼の激しい拒絶にあうだけである。父に殴られたフローレンスは、屋敷を出てウォルターの叔父、ソル・ギルズが経営する船具店に身を寄せる。その店ではギルズが姿を消しており、カトルという老船長が店を守っている。カトル船長はフローレンスをすぐ思い出して店に泊める。

ドンビーは、カーカーがかつて誘惑し捨てたある若い女から、妻とカーカーの居所を聞き出すと、二人をフランスまで追うが、彼らを見つけるまでにはいたらない。一方、イーディスはもはやカーカーと関わりたくないと強く彼を拒否し、それによって夫と彼に復讐するのだと宣言する。イーディスの拒絶にあったカーカーはイギリスに戻り、ドンビーの追跡を逃れて、田舎へ向かうが、ある停車場で、ドンビーに見つかってしまう。その時事故が起きる。彼は突進して来た列車に轢かれて死ぬ。

フローレンスは、ソル・ギルズの店でカトル船長と同居しながら、皆が死んだものと諦めているウォルターが無事戻って来ることをひたすら願っている。彼女の思いが通じ、ウォルターは突然無事な姿を見せる。彼が乗っていた船は座礁したが、たまたま中国へ向かう船に救助されたため、無事を知らせる機会がなかったのである。ウォルターは、留守の間に美しく成長したフローレンスに対して、兄という意識で接することはできないと告白する。彼に対して恋心を抱いていたフローレンスは、ウォルターのプロポーズを受け入れる。ウォルターは船の仕事も見つかり、二人は結婚して東洋に向かう。

一方、再婚に破れたドンビーは、その後会社経営に関心を失う。会社への関心の喪失は一段と彼を不幸へ追いやる。支配人カーカーは、会社の経営を任されていた頃、いくつかの取引に失敗し、会社は窮地に陥っていたからである。カーカーのまずい経営とドンビーの会社への無関心の結果、ドンビー父子商会は倒産する。その後、ドンビーは家に引きこもり、誰とも会おうとせず、しだいに絶望の淵へと追いやられてしまう。

ドンビーが自殺を決意したちょうどその日、フローレンスは1歳になる息子を連れて東洋から戻って来る。その子の名は幼くして亡くなった叔父の名をとってポールと名付けられていた。フローレンスと幼い子はドンビーの心を和ませ、元気付けた結果、彼は再び生きる希望を見出す。そして、娘とも和解したドンビーは、つらくあたったにもかかわらず、フローレンスが常に自分を愛情深く接してくれたことにやっと気付く。ウォルターはビジネスにも成功し、皆一緒に暮らすことになる。 

(担当:青木健氏)

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